LOVEPAIN⑥
「まぁ、俺はお前らの交際は、知らないって事にするから。
篤をクビにしたくないし」


成瀬はそう言うけど。


「私は、いっその事篤がクビになったらいいのにって思ってます」


「え?なんで?」


成瀬は私のその言葉が意外だったみたい。


「だって、篤もこうやって女の子に付き添って現場に行ったりとかあるでしょ?
そうやって仕事とは言え、他の女の子と一緒に居るのも嫌だし、
その子達のAVの撮影も生で見たり…。
篤、今までけっこう事務所の女の子にも手を出してるみたいだし!
もう、心配で仕方ないんです!」


篤への好意に気付いても、
付き合う前はその辺りの事はそこまで気になら無かったのだけど。


いざ、篤が自分の物になったら、
それが許せない。


「あー、なるほど。
お前の気持ちも分かるけど…」


「最近改めて、芽衣子さんは偉大だったと思います。
成瀬さんも仕事でワケアリの私とこうやって一緒だったし。
私の裸を見る事も仕事とは言え、あったし。
もしかしたら、成瀬さんだって私以外にも事務所の他の女の子に手を出す可能性だって、ないとは言い切れないし!」


そう言ってから、ああー、また芽衣子さんの名前を成瀬の前で出してしまったと、自己嫌悪。



「まあ、芽衣子は、俺の仕事の事そこまで詳しく分かってたわけじゃないからな。
その点、お前は知ってる分、辛いか」


成瀬は特にそれを気にしてないように見えるけど、
それは見えるだけなのだと、この人とそれなりに一緒に居るからか、分かって来た。


「まあ、お前もいつかの芽衣子みたいに、
篤のワケアリの女から刺されないように気を付けろよ」


そうニヤリ、と笑っていて、
それなりにもう芽衣子さんの事は気持ちの整理が付いているのだろうな、って思った。


「…そうですね」



本当に、芽衣子さんはとても出来た人だったと思う。


私があの時の芽衣子さんと同じ目に遭ったら、
そのワケアリの女性を警察に付き出すかもしれない。



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