LOVEPAIN⑥
私の姿を見付けたように、
金村監督が私の方へと歩いて来る。


「今日、マネージャーはあの社長さんじゃないんだ」


なんとなく、この人は怖いと警戒してしまう。


「はい。社長の成瀬は体調不良で」


その体調不良は、本当かどうか疑わしいけど。


「昨日電話で話した時は元気そうだったんだけどね。
社長さん、今日は俺の好きなように鈴木広子を撮ってくれていいからってさ。
だから急遽、いい感じの男の子達を一杯集めたから」


金村監督は、ニヤリ、と笑う。


その顔に、体が強張る。



「俺、けっこうそういうの雰囲気で分かるんだけど、
広子ちゃんは今日同行してるあの若い子とデキてるでしょ?」


「あ、いえ…」


咄嗟に篤との関係を否定しようと思うけど、
きっとこの人は私がなんて言おうと、どうでもいいのだろう。


その笑っている顔を見ていると、そう感じた。


「あの社長も、きっとその事を知っているだろうね。
俺より、エグい事するよね。
広子ちゃんがむちゃくちゃにされる所を、彼氏に見せるなんて」


金村監督はそう言って、笑いながら私から離れて行く。


その笑い声は、けっこう離れていても私の耳に届いた。


成瀬は一体何を考えているのだろう…。



私をそんなに苦しめ傷付けて、どうしたいのだろうか。



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