レモンキャンディーにさようならを
これが、私の放課後の定位置。
じっと窓の外を眺める。
東校舎の向かいにある、本校舎の2階を眺めるために。
本校舎の2階には、職員室がある。
職員室の窓際の机に向かう背中。
……広い背中だなぁ。
「古賀先生……」
小さな声で呼んでみる。
当然、届かない。
届かないことを前提にしているから、呼べる。
古賀遥人先生は、私のクラス、2年3組の担任の先生。
それに、私の所属している文芸部の顧問の先生でもある。
何かを書いている様子の古賀先生の背中をじっと眺めつつ、私は幸せに浸っている。
その幸せと同じくらい、後ろめたさも感じているけれど。