レモンキャンディーにさようならを
その日、部室の鍵を返しに職員室へ向かった。
古賀先生に鍵を渡すと、
「川越さん、少しだけ先生に時間をくれませんか?」
と聞いてきた。
「え?」
「教室の掲示板に貼るお知らせがあるんですが、手伝ってはもらえませんか?」
私は黙って頷き、古賀先生と教室まで移動した。
2年3組の教室。
部活時間も終わって、誰もいない。
掲示板の前に立った古賀先生は、
「川越さんが文芸部の課題で書いた作文、読みました」
と静かな口調で話し始めた。
「えっ!?」
思わず焦ってしまう。
だって、その課題は「夢」というテーマで書いた作文だと思い出したから。
「『夢』といっても人それぞれの内容でしたが……、先生は川越さんの作文が心に残りました」