レモンキャンディーにさようならを

誰の心にも残らないと思うからこそ、自分の正直な気持ちが書けたんだ。





「ステキな作文でした」
古賀先生はニッコリ微笑んだ。
銀縁の眼鏡がキラキラ光っている。


笑った顔が優しい。
ニィッと伸びた口元。
目元がスッキリと細くなる。
大人の男の人なのに、少年みたいに見えた。

「川越さん、秘密は守れますか?」

「え?」


そう言って古賀先生はポケットの中に手を入れて、
「レモン、イチゴ、メロン……」
と呪文のように呟いた。

「?」


「どれがいいですか?」


「レ、レモン……?」
恐る恐る答えた。


すると先生が、
「秘密ですよ。でも今日、先生に時間をくれたお礼です」
と言って私の手のひらにそっと何かを乗せた。


レモンキャンディーだった。





「先生は川越さんとお話ししたいです。レモンキャンディーの美味しさだって語り合えます」


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