またね、お姫様


どんな運命が待ち受けていても、


僕は受け止めるつもりだ。


だから、心配しないで。


僕らは、きっと、何があっても負けないから。


いつか、必ず、自由になれる時はやって来る。



僕らのように、


ユダヤ人と、


そうでない人が、


誰からも否定されずに仲良くできる日が、



きっと、やって来る。




だから、その日まで…笑って。



僕は、いつか、きっと君に会いに行く。



だから、その笑顔をまた見せて。



お姫様、笑って。



また、いつか、必ず会おう。



またね、お姫様。



今まで、ありがとう。



大好きだよ』






「……レメック」






涙が、止まらない。




レメックの言葉は、



あまりにも優しくて、



切ない。




この手紙の中から、



大好きな彼の姿が、



浮かんでくるようだ。




レメックは、



辛い生活の中で、



たくさんの優しい言葉を残してくれていた。




お父さんやお母さんが亡くなったことも、



妹と二人だけになっていることも、



そんな大事なことを、何も言わずに…。



あたしを心配させないためだったのかな…なんて、



そんなことを考えてしまう。




でも、きっと、本当にそうだった気がする…




彼は、本当に優しかったから。




この手紙を書いた後、彼は行ってしまったんだ。



殺されるための収容所へ。




ただ、ユダヤ人として生まれただけで。




それを誇りに思っていた人々も、



ただそれだけの理由で、



命を奪われてしまった。




レメックたちは、



そんなひどい歴史の犠牲者になってしまったのだ。




戦争は終わった。



けれど、これからも、その傷跡は残り続ける。




死んでしまった人々も、生き残った人々にも…



世界中のあちこちに。




あたしは、レメックからの手紙を、


胸に抱きしめた。




そして、声を出して、泣いた。





レメック…大好きだよ。



手紙を書いてくれて、ありがとう。





あたしは、



手紙を持って、家を出た。




そして、ある場所へ向かった―――。




そこは―――



あの、お気に入りの場所だった…



戦争で焼けてしまった、あの野原。




あれから、ずいぶんと時間が経ち、



わずかに緑が生えはじめ、



少しずつ元通りの姿に戻ってきていた。




この野原と共に、



今、世界中が、



復活しようとしている。




戦争で傷ついてしまったものを、



少しでも癒そうとしている。




レメックたちは、この光景を、見ているだろうか…――。




きっと、この野原が元通りになっていっているのを、



レメックは喜んでいるに違いない。




ここにいると、



レメックの笑い声が聞こえてくるようだ。



  
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