殺人感染2
☆☆☆

どうにか話が聞けることになった俺たちは、昨日の喫茶店へやってきていた。


この辺では現役を引退した人たちの憩いの場となっているようだ。


「まさか、あの家が売れるなんて思ってもいなかったわ」


森安さんはコーヒーを一口飲んで言った。


「あの家、売られるんですか?」


「えぇ。この辺じゃ有名な心霊スポットになっていたし、あんな事件を起こした家族が暮らしていた家なのに、物好きがいるわね」


「だから、掃除をしてたんですね」


俺は納得すると同時に焦りを感じていた。


あの家が他人の手に渡れば、もうなんのヒントも得られないような気がした。


「それで? あなたは文隆のなにが知りたいの?」


真剣な表情になって森安さんはそう聞いてきた。


俺は居住まいを正してもう1度隣街で起こっている事件について説明した。


「あれはただの事件じゃありません。殺人感染なんです」


森安さんは途中で口をはさむことなく、ジッと話を聞いてくれた。
< 26 / 54 >

この作品をシェア

pagetop