殺人感染2
でも、当時ではそれは珍しいことではなかったようだ。


「兄はあまり学校にも行かなかった。時々登校しても周りからアザのことで忌み嫌われてイジメを受けるのが関の山だから。それでも、高校にあがってからはできるだけ学校へ行くようになったの。兄は勉強が良くできたし好きだとも言っていたから。それに、友達と呼べる人も一応はできた」


その言葉に俺は桃田さんの顔を思い出していた。


「それってもしかして、隣の桃田さんですか?」


聞くと森安さんは驚いたように目を丸くした。


「よく知っているわね」


「実は昨日もあの家を訪れて、その時桃田さんに少しだけ話を聞けたんです」


怒られるかと思ったが、目の前にいる森安さんは穏やかな表情で「そうだったのね」と、うなづいた。


「そうよ。兄は桃田さんと仲良くなった。家にいるときも、家族の目を盗んでこっそりと連れ出してくれることがあった」


それを聞いて少し安心した。


文隆はずっと人としてひどい扱いを受けていたのかと思ったが、ちゃんと友人らしい友人がいたということになる。
< 29 / 54 >

この作品をシェア

pagetop