殺人感染2
「桃田さんは兄をよく映画に連れて行ってくれた。昔は隣町に大きな映画館があったのよ。沢山人が出入りしててね……」
懐かしむように言葉をつむぐ森安さんがハッと気がついたように言葉を切り、「話がそれちゃったわね、ごめんなさい」と、照れ笑いを浮かべた。
「いえ、大丈夫です」
「兄は外へ出るときには深く帽子をかぶって耳を隠すように言われていたの。だけど、映画館ならまわりが暗いから、その帽子をぬぐことができるでしょう? そういうこともあって、こっそり抜け出して桃田さんと映画を見るのをとても楽しみにしていたのよ」
「そうなんですね。ご両親は文隆さんを連れて映画には行かなかったんですか?」
聞くと、森安さんは左右に首を振った。
「言ったでしょう? 沢山の人がいたって。そんな場所に兄を連れて行くことなんて、するはずないわ」
「そうですか……」
ということは、文隆が外とつながりあえる唯一の存在が桃田さんだったということになる。
映画の件もそうだけど、学校へ行くようになったのもそこに桃田さんがいたからみたいだ。
文隆にとって、桃田さんがかけがえのない存在だったということがわかった。
懐かしむように言葉をつむぐ森安さんがハッと気がついたように言葉を切り、「話がそれちゃったわね、ごめんなさい」と、照れ笑いを浮かべた。
「いえ、大丈夫です」
「兄は外へ出るときには深く帽子をかぶって耳を隠すように言われていたの。だけど、映画館ならまわりが暗いから、その帽子をぬぐことができるでしょう? そういうこともあって、こっそり抜け出して桃田さんと映画を見るのをとても楽しみにしていたのよ」
「そうなんですね。ご両親は文隆さんを連れて映画には行かなかったんですか?」
聞くと、森安さんは左右に首を振った。
「言ったでしょう? 沢山の人がいたって。そんな場所に兄を連れて行くことなんて、するはずないわ」
「そうですか……」
ということは、文隆が外とつながりあえる唯一の存在が桃田さんだったということになる。
映画の件もそうだけど、学校へ行くようになったのもそこに桃田さんがいたからみたいだ。
文隆にとって、桃田さんがかけがえのない存在だったということがわかった。