殺人感染2
「桃田さんが兄を連れ出すようになった頃、両親は兄の扱いに困るようになっていたわ」


「それはどうしてですか?」


「16歳といえば当時で言えばほとんど大人よ。これから先兄をどうして行くかで、よくもめていたの」


「卒業後外へ出て働くとか、そういうことは?」


「もちろん話の上では出てきていたのよ。だけどね、今まで家からほとんど出たことのない兄が、いきなり社会に出て行くことができると思う?」


聞かれて俺は思い至った。


高校に入学してからようやく学校へ行き始めた文隆は、桃田さん以外の友人ができた様子は見られない。


つまり、人付き合いができていなかったということになる。


もしかしたら、当時はまだイジメられていたのかもしれない。


「きっと、兄も両親の気持ちにはうすうす気がついていたと思う。けど、家からほとんど出ない兄にはどうすればいいかわからなくて、兄自身もとても悩んでいた。そんな中で桃田さんとの映画は兄にとって気晴らしになったと思うの」


「そうなんですね」


「えぇ。でも、そんなときに兄は余命宣告を受けてしまった」


その言葉に俺の心臓がドクンッとはねた。
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