殺人感染2
「ある晩、兄は突然吐血したの。何が原因なのか当時の医療ではよくわからなかった。けれど体を調べてみる限り、20歳までは生きられないだろうということが判明したの」


説明する森安さんの声はどんどん小さくなり、最後には消え入りそうになった。


「その後、あの事件が起こった」


俺は呟いた。


生まれてから長い間家に閉じ込められ、外に出たらイジメられ、やっと桃田さんという友人ができたと思ったら余命宣告を受ける。


文隆の胸の奥にどす黒い気持ちが生まれる瞬間が見えるような人生だ。


「話してくださってありがとうございました」


俺は重たい気分になり、そう言ったのだった。
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