殺人感染2
そして、その時間がやってきたのだ。


休憩時間中の文隆はずっと耐えていた。


クラスメートに何を言われても言い返すこともなく、我慢を続けていた。


そんな我慢や、今までの気持ちがすべて爆発するように授業中に勢いよく席を立ったのだ。


黒板に向かっていた先生が椅子の音に気がついて振り向く。


そして棒立ちになっている文隆を見て顔をしかめた。


「なにしてる。座りなさい」


注意をした次の瞬間、教卓近くの席だった文隆は先生の腹部を深く深くナイフで突き刺していた。


席が近い私はすぐのその事態に気がつき、呆然として文隆を見つめた。


その時の文隆の顔は今でも忘れられない。


あれだけ楽しそうに笑う顔、初めてみたからだ。


文隆の恍惚とした表情を見た瞬間、あぁ。これだと感じた。


私が文隆のためにできることをようやく見つけたのだ。


文隆が先生を刺したことに気がついて生徒が悲鳴を上げて立ち上がる。


それより先に私はドアの横に移動していた。


そして、教室から逃げ出そうとした一番最初の生徒をこかせたのだ。


後はドミノ倒しだった。


次々と迫ってくる生徒たちが、こけたせいとにつまづいてこける。


立ち上がろうとする前に次の生徒がやってくる。


そうなると下敷きになった生徒は簡単に脱出することはできなくなった。


私はそれを確認して、巻き込まれないように身を引いた。


一瞬文隆と視線がぶつかったので、私は微笑んだ。


どうぞ。


好きにして。
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