Re:START! ~君のバンドに、入ります~
ボーカルなんて、無理!
「だけどやっぱりあなたが好きだよ~。悔しいけどー!」
お腹の底から声を出して歌う私。
カラオケ店のせまい個室に、私――初音詩乃の歌声が響き渡る。
やっぱりひとりカラオケって最高!
学校が休みの日曜日。
私はひとりでカラオケに来ていた。
もちろん、大好きなひとりカラオケを楽しむために。
私は小さい頃から歌を歌うのが大好きだ。
昔は親戚や友達の前で堂々と歌っていたけれど、いろいろあって今では誰かの前ではうまく歌えない。
弟の奏太の前でならなんとか歌えるけれど、家で思いっきり歌ったら、外まで聞こえて近所迷惑になっちゃう。
だからこうして、たまにひとりでカラオケに来て楽しんでるってわけ。
三十分百五十円のカラオケ代は、中学二年生にとってみれば決して安い金額じゃない。
だけど、お年玉でここのカラオケの利用券をまとめて買った私は、月々のお小遣いを使うことなく来れるんだ。
ふと、お母さんから借りたタブレット端末で時間を確認したら、もう残り時間は五分だった。
あと一曲なら歌えるかな。
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