レイン。序章
俺もサンドラも、何もしゃべらなかった。

またしばらく進むと、ぽつんとテントが現れた。

「俺たちが住んでいたところです」

俺たちは、駱駝を降りて、切り裂かれたテントの隙間から中に入った。

俺が殺した男は、そのままうつ伏せで倒れていた。

鍋も、皿も、薪も散乱して、酒や食べ物が荒々しく食い散らかされていた。

そして、その真ん中に、母さんの遺体があった。

もう一ヶ月近くも、砂漠に放置されていたせいで、美しかった彼女は見る影もなくなっていた。

眼球の腐り落ちた目は窪んで、鼻にも、開け放たれた口にも、サソリがたかっていた。

服は剥ぎ取られて、床に打ち捨てられていた。

母さんは、全裸で仰向けに転がされていた。
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