レイン。序章
ふと右を見ると、ちょっと小太りな背の低い男が、鷹揚な笑みを浮かべていた。

彼の足元を見ると、小麦や、大麦、ライ麦が、麻袋に入ってうず高く積まれていた。

「やあ、少年。お使いかな?」

男はさらに笑顔を強くした。笑うと目が細くなって肉に埋まってしまっている。

「この小麦の、値段を教えてもらえますか」

男はゆったりとうなずいた。

「1キロ10ガロでいいよ。本来ならもっと取るんだがね、君はまだ小さいのでなあ」

男はガハハと笑った。

俺は礼を述べると、首にかけた小袋から硬貨を数えて出した。

「おい、邪魔だ、どけ」

背後から乱暴な声がして、俺は押しのけられてよろけた。

何をするんだ、と思って見上げると、その男の横顔には、見覚えがあった。
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