レイン。序章
俺と妹が搾った乳は、旅人をもてなすためにゴートが持っていった。

俺は、サンドラのテントにメルを連れていくと、ベッドに入らせた。

「いいか、誰かが来たら布団をかぶって顔を隠すんだ。寝ているふりをしろ。あの旅人にだけは、顔を見られちゃだめだ」

俺の剣幕があまりに険しいので、メルは神妙にうなずいた。

俺は小屋を出てサンドラを探した。

盗賊たちは、ゴートのテントに招かれたようだった。

賑やかな声や、楽器の音が聞こえてくる。

「サンドラ!サンドラ!」

俺はなるべく小さな声で彼を呼んだ。

サンドラがゴートのテントから出てきた。

俺の様子を見て、ただ事ではないと悟ったようだった。
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