レイン。序章
テントに戻って、食事を済ませた。

それから、俺は、メルが砂に描いた絵を見た。

「なんだこれ?」

メルは笑いながら言った。

「お花だよ。サボテンに咲くのでしょ?本物、見たいなあ」

ははは、と俺も笑った。

牛は、うちでは5頭飼っている。

俺たちは、それらを水場へ連れていき、それから草原でひとしきり食事をさせて、テントの近くに繋いだ。

俺は、腰に差してある短剣を抜いた。

「お兄ちゃん、それ、かっこいいね!」

メルがやってきて言った。

俺は、ブーツの足首のところに隠してあるナイフも抜いた。

振りかぶって、投げた。

テントの支柱に、さくりと刺さった。

「お兄ちゃん、すごい!すごい!」

メルの嬉しそうな声が何度も響いた。

日は傾きはじめていた。

オレンジ色の光の中で、俺たちは笑いあった。


夕日に包まれているような気がした。

母さんの呼ぶ声がした。

今日も、いつもの一日が終わろうとしていた。
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