レイン。序章
その男の姿を見て、俺は全身が総毛立つような気がした。

まぎれもなく、俺の母さんを殺した張本人だった。

「ハッハァ!」

彼は高らかに笑った。

「若造二人で何ができる。だがよくもったほうだぜ」

男は左腕に刺さった矢をひょいと抜いた。

それから、血糊でべっとり濡れたサーベルをマントの裾で拭った。

「ちくしょう……」

ゴートが歯ぎしりした。

「おい、バキ」

男は最後に残った部下の名を呼んだ。

「金目のものを奪え。残らずだ」

命じられた痩せぎすすな男は、片足を引きずりながらテントの中に入った。

「だめです親分!何もありやせんぜ!いったいどうなってるんでさぁ」
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