レイン。序章
俺も騎馬に向かって全速力で走った。

歯を食いしばった口の中に、血の味がした。

自分のものとは思えない、獣のような雄叫びを聞いた。

俺は馬の動きを精細に目で分析した。

一秒が一時間にも感じられる。

目の前に馬の前肢が猛然と迫ってきた。

毛の一本一本まで見てとれるようだ。

俺には考えがあった。

もうすぐぶつかる。

この一瞬が勝負だった。

俺は大剣を大きく後ろに振りかぶり。

そして。

勢いよく、スイングさせた。

男の左脚の骨が砕けた。

斬り離された脚が、くるくると宙を舞って。

砂に刺さった。

馬の皮が、筋肉が、脂肪が、脊髄が。

俺の身体に確かな振動を伝えながら。

裂けていった。
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