レイン。序章
俺はテントの中に駆け込んだ。

剣を思いっきり、一人の男のうなじに突き刺した。

それから、男の背中を蹴りとばして、剣を抜く。

血しぶきが全身にかかった。


「このガキ…!」

子分の男がサーベルで斬りかかってきた。

俺は必死に剣で応戦した。

「メル!」

妹は母さんの陰に隠れて怯えていた。

母さんは俺のほうを見た。

そして、傍らにあった木の棒をつかんで、もう一人の男に殴りかかった。

彼はやすやすと彼女の一撃をかわし、彼女の頭を掴んで地面に叩きつけた。

「ぎゃっ」という声がした。

メルは固まったまま立ち尽くしていた。

「おい、少年!母親がどうなってもいいか」

親玉らしいその男が、低い声で凄んだ。

母さんは俺を見ようとしなかった。

俺は止まらなかった。

男のサーベルをかいくぐり、俺はメルのほうへ走った。

親玉の手にきらめく剣が、母さんの背中に突き立てられる光景が、視界の隅に焼きついた。
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