俺が好きなのは、ずっとお前だけ。
「うん、大丈夫。ありがとう」
前島くんが私の手を握り、立ち上がらせてくれた。
細身に見えるのに、助けてくれた腕の強さはしっかりと男の人のものだった。
「私も本当にごめんなさい。あっ」
廊下に本が数冊、落ちていた。
私も1冊拾って、彼に渡す。
「ありがと。借りてた本を、図書室に返しに行くところだったんだ」
前島くんが、拾った本の表紙を手でパッパッと払う。
「その本、私も今度借りようと思ってたの」
私は、前島くんの手にあるミステリー小説を指さす。
「これ、面白かったよ。この作者はいつもながら、さすがだと思ったよ。この小説も予想外の展開で、見事に裏切られた」
本の感想を述べる前島くんの瞳が輝いてる。
この人、ほんとに本が好きなんだなぁ。
楽しそうな彼の表情から、それが伝わってくる。