俺が好きなのは、ずっとお前だけ。


「だってこの本、最初の数ページ読んだだけで、引き込まれるんだよ」

「へぇーっ」


最初の数ページで……か。それは、興味深い。


私と前島くんは教室で会うと、基本的にはこんなふうに、小説の話をすることがほとんど。


最初の頃は、好きな作家のこととか。今まで読んで面白かった本を、オススメし合ったり。感想を言い合ったり。


私としては、七星以外に自分と同じ読書が趣味の友達が新たに増えて、嬉しいなって思っているところ。


最近は、本の話以外にも学校のこととか、世間話もするようになった。


「というわけで、この本を古賀さんに貸してあげます」


「え? いいの!? 嬉しい! あ、でも……この前も前島くんに本を借りたところなのに」

「いいよ、いいよ。僕は、古賀さんに読んでもらいたいから。それに……」


前島くんが、装着しているメガネを中指でクイッと押し上げる。


「こういうことは、古賀さんと共有したいんだよね。同じモノを好き同士、一緒に楽しみたいというか」


共有……か。


そしてここ最近になって、こんなふうに前島くんと私は、本の貸し借りもするようになった。


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