俺が好きなのは、ずっとお前だけ。
朝陽くんに大声で名前を呼ばれて振り向くと。
「これ、使いなよ」
朝陽くんが、自分の傘を私に渡してきた。
「家に帰るとき、傘ないと濡れるだろ」
「おっ、親に駅まで迎えに来てもらうから良いよ」
「ばーか。美月の親、共働きだって前に言ってただろ? この時間に仕事終わってんの?」
いや、お父さんは最近仕事が立て込んでるって言ってたし。お母さんも今日は、遅番だから。
夕方の今はまだ、仕事終わってないと思う。
「でも、朝陽くんも濡れるよ」
「俺はいいの。俺の家、ここから近いから。
さっき図書館で、美月の肩に俺の頭をのせさせてもらったお礼、ってことで。じゃあな」
そう言うと朝陽くんは、カバンを傘の代わりにして、ザーザーと降る雨の中を走って行ってしまった。