俺が好きなのは、ずっとお前だけ。
朝陽くんが元凶。私は……そうは思わない。
私は、一晴くんから離れた。
「美月ちゃん?」
「一晴くん。朝陽くんを……私の好きな人のことを、元凶とかそんなふうに言わないで」
私は、その場から立ち上がる。
「美月ちゃん。一之瀬のことが……好きなの?」
「うん。私は朝陽くんが……好き。だから、一晴くんの想いには応えられない。ごめんなさい」
私は、一晴くんから顔を逸らした。
なんとなく気まずくて。一晴くんの顔が見れなくて。
何より一晴くんに、朝陽くんのことを悪く言われたことが嫌だった。
「そっか。美月ちゃんが、あいつのことを好きなら……仕方ないね」
「ほんとごめん、一晴くん」
私は一晴くんをおいて、逃げるように階段を駆け下りて行く。
「僕は美月ちゃんのことを思って、あいつをキミから遠ざけたけど……。美月ちゃんのためと言いながら、自分のためだったのかもな。2人には、悪いことしちゃったな。やっぱりどうしても敵わなかったよ、あいつには。最近の美月ちゃんは、一之瀬しか見てなかったもんな。
どうか美月ちゃん……幸せになって」
先にこの場からいなくなった私の耳に、一晴くんのつぶやきが届くことはなかった。