俺が好きなのは、ずっとお前だけ。
「なぁ。ずっと気になってたんだけど……美月、入試のあのとき、どうして俺に声をかけてくれたの?」
「ああ……あのときの朝陽くんは、顔が真っ青で、なんだか見るからにしんどそうだったから」
受験当時の朝陽くんは、緊張とは無縁そうな今の朝陽くんからは想像もつかないくらい、傍から見ても分かるほどすっごく緊張していた。
負のオーラが漂っていて、顔面蒼白で大丈夫かな? って、思わずこちらが心配になってしまうほどだった。
あの日私は、もしものときのために頭痛や腹痛の薬を持っていたから。
すぐそばで頭をおさえて困っていそうな人を、助けたいと思った。
「単純に人助けっていうのもあるけど……。一番は、ある人への恩返しの気持ちが大きかったかな?」
「……恩返し?」
そう。中学3年生の夏に、私に優しく声をかけてくれた男の子への。
私は、当時を思い出すように宙を仰ぐ。
「その人とは一度会ったきりだから、顔がハッキリと思い出せないんだけど。朝陽くん、話聞いてくれる?」