俺が好きなのは、ずっとお前だけ。
…───あれは、中学3年生の夏。
夏休みも残りわずかとなった、8月下旬のある日。
塾からの帰り道。
夕方だから、日中に比べると暑さは少し和らいだ気がする。
18時を過ぎたというのに、まだまだ明るい空の下を私は、落ち込みながら歩いていた。
この日返された模試の結果が、C判定だったのだ。
もうすぐ夏も終わるのに、第一志望校がC判定なのは、かなりまずいのかな? って。
自分が、落とし物をしたことにも気づかずに、とぼとぼと歩いていた。
セミの鳴く声が、心做しかいつもよりうるさく感じる。
「ねぇ、何か落としたよ?」
振り返ると同世代くらいの男の子が、私の模試の結果が書かれた紙を手にしていた。
うそ!? ちゃんとトートバッグに入れていたはずなのに、なんで!?
ていうかこの男の子、かっこいい……かも。
同じ塾に通ってる子なのかな? それとも、通りすがりの人?
男の子は、サラサラのきれいな黒髪に、左耳にはピアスをしている。
そして背が高くて、スタイルが良くて。とにかく顔が整っていて、かなりのイケメン。
直視できないほど。
「……へぇー。キミ、柚ヶ崎高校が第1志望なの?」