俺が好きなのは、ずっとお前だけ。


彼の顔を忘れまいと、毎日頭の中であの笑顔を思い浮かべてはいたけれど……。


結局彼と会ったのは、あの日の一度きりだけだったから。


ただでさえ、人の顔を覚えるのが不得意な私は、半年という時間が経つと共に、彼の顔の記憶はどうしても薄れてしまった。


あのとき、彼の名前を聞いていなかったから……。彼の手がかりは、飴と自分の記憶以外何もなかった。


そして私は、彼からもらった恩をいつ返せるか分からないから。代わりに他の困ってる人に、恩を送ろうと考えるようになった。



──あれから半年間。遊びも寝る間も惜しんで、最後まで諦めずに必死に勉強した。


ちなみに夏の模試でC判定だった第1志望の柚ヶ崎高校は、自分の両親が出会い、過ごした高校。


だから、自分もそこに通ってみたいと思ったのがきっかけだけど……。


いつしかもう一度、あの男の子に会いたいという気持ちのほうが大きくなっていた。


あの男の子に会って、もう一度ちゃんとお礼が言いたい。その一心で、つらい勉強も頑張れた。


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