俺が好きなのは、ずっとお前だけ。
不覚にも、一之瀬くんの甘い低音ボイスに、胸がときめいてしまった。
そんなセリフを、耳元で囁くように言われたら……やばい。
ていうか、『俺のこと、惚れさせてやるから』って、何?
ひょっとして、いつもの冗談?
そして、さっきから気になってたんだけど。
一之瀬くんが自己紹介を始めたあたりからずっと、クラスの注目の的になっている。
目立つの嫌いなのに……。
初っ端から、女子の標的にだけはされたくないから。
ここは、一之瀬くんにハッキリ言わなくちゃ。
「あの、一之瀬くん……もし私をからかっているのなら、もうやめてもらえます?」
「えー、なんでそうなるわけ? からかってねぇから。俺はいつも真剣。さっきも、本気だって言っただろ?」
一之瀬くんが唇を尖らせる。
「だって俺、古賀さんのことが好きだから」
う。そんなキラキラした笑顔で、ストレートに言わないで。
「古賀さん、俺の彼女になってよ」
なんか、軽々しく聞こえるんだよね。
……どうせまた、遊ばれてるだけだ。
中3のときの、傷ついた過去があるんだから。
そんなの信じちゃダメだ……。
「……お断りします!」