俺が好きなのは、ずっとお前だけ。
一之瀬くんに腕を掴まれたまま、昇降口に向かって廊下を進んでいく。
掴まれている腕を振りほどこうにも、男の人の力にはかなわなくて。
「……ムカつく。あー、まじムカつく」
一之瀬くんは教室を出てから、ムカつくとしか言っていない。
一之瀬くんがムカつくと言う度に、私の腕を掴む一之瀬くんの手に力が入る。
「一之瀬くん、痛いっ……痛いよ!」
「あっ、わりぃ」
校門を出てしばらく行ったところで、ようやく一之瀬くんが掴んでいた手を離してくれた。
「美月、ごめん。俺、なんか無性に腹が立っちゃって……痛かった?」
一之瀬くんが、先ほどまで掴んでいた私の腕を「ごめんな」と、優しく摩ってくる。
一之瀬くんの、何でも包み込んでくれそうな大きくて温かい手のひら。
触れられているっていうのに、なぜだか嫌じゃない。