君がいた世界は輝いていた。
私は、孤独な高校3年生、浜名萌花(はまな もか)。
今でも親から虐待を受け続けている。
おかげで体は傷だらけ。
周りにバレないように、と考えて殴ったり、蹴ったりをしているみたいだけど。
周りにばれないように、っていってもそんな人望私には無いから安心してやればいいのに。
学校に行ったっていじめの練習相手になっているようなものだ。
朝から机の上は貼り紙がたくさんある。
『死ね』
『学校にくんな、気持ち悪い』
もう慣れたけど。
このくらいはなんてことない。
だって、捨てればいいんだから。
昼休みになると、誰もいないところに呼び出されて暴力、暴言のオンパレード。
私のことをいじめてくる人は全員女子。
だから、親に比べれば痛くはない。
全然平気。
貼り紙とか暴力とか暴言は気にしなければいい。
でも、本当は辛い。苦しい。悲しい。
心の傷を癒せる私の居場所なんて無いから。
家は地獄。
学校だって地獄。
他には私の居場所なんてないんだよ。
本当にこの世は残酷だ。
みんなはなんで私のことを嫌うの?
何かしたっけ?
悪口言った?
殴った?
蹴った?
仲間外れした?
何もしてないよ。
それなのに、なんでなの?
あぁ、そっか。
私なんて最初から必要じゃなかったんだ。
生きてる価値なんてひとつも無いんだね。
じゃあ、死のうかな?
多分、というか絶対誰も止めないよね?
それだけ私の存在はいらないんだ。
親だって、母親だって。
こんな私を産んだくせにすぐに見捨てて。
すごく苦しいよ。
すごく悲しいよ。
私なんて産んでくれなくてよかったのに。
でも、今から死ぬから大丈夫。
もう安心だな。
本当に天国に行ける?
天国ってあるの?
私の足は勝手に動く。
学校の屋上。
誰もいないところで。
校庭にいる人々の声。
スマホを持って、面白そうにして動画を撮る人たち。
でも、誰も来ない。
あ、そっか。
みんな喜んでるんじゃん。
こんな私いないほうがいいもんね。
安心して。
今から消えるから。
そう思って、フェンスの上に乗る。
飛び降りようとした。
目をつむり、体を斜めにする。
「待て、待て」
誰だろう。
私のことを止めているの?
「聞こえてるんだろ?」
「なんで止めるの?こんな私なんかっ」
「はあ?一回降りろ。」
「分かった。話してスッキリしたら飛び降りるからっ。」
そう言って、フェンスから降りる。
「なんでこんなことするだよっ」
「なんで、?なんでって。こんな私は必要ないの。生きる価値なんて無いから。もういいかな?死んだほうが楽なんだ。」
「俺の話も聞け。生きる意味がないとかお前やばいな。何があったか知らねぇけど、俺が生きる意味教えてやるよ。一緒に生きる意味見つけようぜ。だからーーー。」
さっきから何を言ってるの?
何もわからないくせに。
私なんか本当はどうでもいいんでしょ?
私が学校なんかで死んだら、学校側が責任を取らなくちゃいけないとかで代表して私を止めに来たんでしょ?
「なんで私にかまうの?あんなにいじめてたくせにっ」
「いじめ?俺、クラス違うから分からなかった。ごめんな。だけど、それだけ?」
本当に意味がわからない。
なんなの?
早く死にたい。
「何よ。それだけって。早く死なせて。辛いの。家でも、学校でも。私の居場所無いんだよっ」
私は泣いていた。
ずっと。
君の前で。
名前も顔も知らない君の前で。
はじめましてだよね。
なんか、ごめんね。
「萌花。大丈夫だ。俺が居場所を与えてやる。辛くないように。だから、」
「生きろっ」
『生きろっ』その言葉に心が揺さぶられた。
そんな言葉生まれて始めて言われた。
私に生きる意味あるよ、って言われているみたいで。
「うっ、う、…」
私はもっと泣いた。
なんだろ。
悲しいとかそういうんじゃなくて、心地良いから?
「今は泣いていいけど、これからは泣くんじゃないぞ?いいか?」
今は、か。
泣くの何年ぶりだろう。
すごい久しぶりだな。
「うん」
誰だろう。
そういえば名前。
君は私の名前知っていたよね。
「あの、名前は?」
「俺は、杉野凪。凪でいいから。堅苦しいのとか困るし。」
「な、凪くん。よろし、く」
友達。
その関係は初めてだった。
また泣いちゃいそうだよ。
嬉しすぎて。
でも、我慢した。
君はずっとここで笑顔で見ていてくれているから。
君が居場所を与えてくれたから。
凪くんーーー君の隣という場所を。
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