君がいた世界は輝いていた。
噴水に座る私と凪くん。
「あのね、凪くんママから聞いたんだ。病気のこと。」
「っ、へえ」
「なんかね、そのとき私泣いちゃって。すごく悲しかった。だから、これから1か月楽しく過ごしたい。」
「おう。よろしくな。死ぬけど。」
こんなことを元気に言っているけどわかるよ。
私なら。
「本当は怖いんでしょ?」
「っ」
図星を突つかれたような顔。
今度は私が抱きしめる番だよね。
「よしよし」
夜の涼しいそよ風。
その風で揺れる君の髪は月に照らされている。
私達の一ヶ月。
大切な人とともに。
凪くんの余命はあと2週間。
この頃、お腹が痛い。
吐き気がする。
なんか、くらくらする…
あれ?
病院かな?
あのあと倒れちゃったんだよね。
すると、病院の先生らしき人が来た。
深刻そうな顔をして。
「浜辺さん。具合は?」
「大丈夫そうです。」
「浜辺さん。あのね、検査をしたところ君は肺がんなんだ。」
「う、そ」
いつの間に検査?
というより、私は肺がんという事実に目を見開き、現実かと確認する。
「見つかるのが遅くてがんが進行している。残念ながら、君はあと半年しか生きられない。」
うそだ。
絶対、何かの間違いだよ。
私っておかしいよね。
前までは死にたくて仕方なかったけど、凪くんに会ってから変わっちゃったな。
今は、死にたくなくて仕方ない。
生きたいって思う。
「杉野さん家がかかりつけの病院でね、凪くんが連れてきてくれたんだ。杉野さんたちには報告しといたよ。」
報告されちゃったんだ。
なんか嫌だな。
なんか現実を受け入れたみたいで。
死にたくないのに。
「今は安定しているから普段どおりに生活してもらって構わない。でも、定期的に病院に来るように。」
「はい。お世話になりました。」
暗めにそういった。
病気を患っている人の気持ち、分かった気がする。
「萌花っ」
病室の前で待っていたのは凪くんと凪くんママ。
「萌花ちゃんっ。大丈夫なのっ?本当に帰れるの?」
「ご心配お掛けしてすみません。大丈夫です。」
私達は車に乗って帰った。
私の居場所に。
「もう寝ますね。」
私はもう死ぬんだ。
あの時、凪くんに止められたけど。
どうせ死ぬんだ。
人間は。
そう思って眠りについた。
凪くんの余命は残り1日となった。
私は部屋を出た。
ダイニングテーブルに一通の手紙があった。
『萌花へ 俺は多分明日死ぬよ。なんでだろ。せっかく萌花に会えたと思ったのにな。まだ言いたいことあんのに未練のままかよ。どうせ何言いたいか鈍感な萌花には分かんねぇよ。楽しかった日々をありがとな。俺は死ぬけど、できれば、俺がいたことを忘れないでいてくれ。不器用な俺が書いた手紙だぞ?宝物にしろよな。萌花に会えてよかった。俺は世界一の幸せ者だよ。』
そう書いてあった。
一人泣いている私。
私も感謝を伝えないと。
好きだってことも。
家の中には凪くんの姿はない。
私は急いで家を出た。
運動は苦手だけど、本気で走った。
でも凪くんの姿は見当たらない。
このまま会えないでいなくなるのかな?
私は会いたいよ。
凪くんっ。
ねぇ、お願い。
話そう。
すると、公園の噴水に座る人が見えた。
「凪くんっ」
涙が溢れた。
「萌花っ。なんでっ」
「最後に話したかったのっ。話聞いて」
「おう」
「とにかくありがとうっ。私のこと助けてくれて。生きる意味教えてくれて。抱きしめてくれて。私のことまた助けてくれて。笑わせてくれて。居場所をくれて、私と出会ってくれて、ありがとうっ」
「な、なんだよ。急に」
「私だって感謝を伝えたいよ。こんなに不器用な凪くんが手紙書いてるんだもんっ。」
「もう見たのかよ」
「見たよ。あの手紙もありがとうっ。私、凪くんのこと好きだから。恋ってものを教えてくれてありがとうっ。じゃあ。」
言えることは全部言い切った。
「まだ俺に未練あんだけど?」
帰ろうとしたけど凪くんの声に止められる。
「俺は小学生んときに萌花に出会った。萌花は忘れてるだろーけど俺にとっては命の恩人だった。親父が死んだってなったときに絶望してた俺に声をかけてくれたのは萌花だった。死にそうな顔してるって俺を抱きしめてくれてんだよ。俺はそれで救われた。やっぱり生きたいって思った。萌花が惚れるような男になりたいって目標まで持った。ずっと好きだった。萌花のことが好きなんだよ」
これが未練?
私のこと好き?
「返事とかそういうんじゃなくて、ただ言いたかっただけだから。萌花が俺の事好きだって知ったし、死んでもいいかなって」
「死んじゃだめっ。本当は死にたくないんでしょ?分かるよ、私も同じ人間で病人なんだからっ。最後まで病気と闘うのっ。私が好きになった男なんだから頑張ってよね。こんな前向きになれたのも凪くんのおかげだから。本当にありがとうっ」
「俺だって…」
「私だって」
「「本当は生きたいんだよっ」」
正反対の私達。
だけど、これだけは一緒なんだ。
どんな人間だって。
辛くても、苦しくても、悲しくても。
みんな生きたいんだ。
本当は。
心のどこかで。
心の隅で思ってる。
多分、あのときの私も、思ってた。
本当は生きたいんだ、って。
がんになったけど、もっと生きたかった。
大好きな君の隣で。
「俺は、こんな世界の中で萌花に会った。ずっと運命だって思ってた。そんな言葉信じらんないかもしれないけど、俺はずっと思ってるから。あっちの世界でもずっと待ってるから」
「ありがとうっ。ふたりで生きたかったね。絶対行くから。」
余命宣告されてから凪くんはちょうど、明日の0時0分に旅立った。
私は、余命半年だったけど奇跡的にがん細胞が小さくなり、平均寿命まで生きられるとのこと。
これも君がくれた奇跡。
本当に、ありがとう。
私が80になっても待っててくれるの?
早く君のところに行きたいけど、
私は生きるよ。
辛くても、苦しくても、どうしても死にたくても。
生きる意味、ちゃんと見つけたから。
ーーー君のために生きるんだ。
ちゃんと待ってて。
頑張って君のために生きて、良いことして、必ず行くから。
あの世へたどり着けるように。
君がいた世界は輝いていた。
今日よりも明日、明日よりも明後日は
輝いている。
君の笑顔はもっと輝いていた。
1年先よりも、10年先よりもずっと。
私に生きる希望を与えてくれた君は、
最高だった。
君のお葬式はみんな泣いていた。
私は泣けなかった。
だって私に
泣くな って言ったでしょ?
だから私は泣かない。
あの世で君にあったとき、
そのときは泣くけど許してね。
私の居場所は君の隣だけから。
「あのね、凪くんママから聞いたんだ。病気のこと。」
「っ、へえ」
「なんかね、そのとき私泣いちゃって。すごく悲しかった。だから、これから1か月楽しく過ごしたい。」
「おう。よろしくな。死ぬけど。」
こんなことを元気に言っているけどわかるよ。
私なら。
「本当は怖いんでしょ?」
「っ」
図星を突つかれたような顔。
今度は私が抱きしめる番だよね。
「よしよし」
夜の涼しいそよ風。
その風で揺れる君の髪は月に照らされている。
私達の一ヶ月。
大切な人とともに。
凪くんの余命はあと2週間。
この頃、お腹が痛い。
吐き気がする。
なんか、くらくらする…
あれ?
病院かな?
あのあと倒れちゃったんだよね。
すると、病院の先生らしき人が来た。
深刻そうな顔をして。
「浜辺さん。具合は?」
「大丈夫そうです。」
「浜辺さん。あのね、検査をしたところ君は肺がんなんだ。」
「う、そ」
いつの間に検査?
というより、私は肺がんという事実に目を見開き、現実かと確認する。
「見つかるのが遅くてがんが進行している。残念ながら、君はあと半年しか生きられない。」
うそだ。
絶対、何かの間違いだよ。
私っておかしいよね。
前までは死にたくて仕方なかったけど、凪くんに会ってから変わっちゃったな。
今は、死にたくなくて仕方ない。
生きたいって思う。
「杉野さん家がかかりつけの病院でね、凪くんが連れてきてくれたんだ。杉野さんたちには報告しといたよ。」
報告されちゃったんだ。
なんか嫌だな。
なんか現実を受け入れたみたいで。
死にたくないのに。
「今は安定しているから普段どおりに生活してもらって構わない。でも、定期的に病院に来るように。」
「はい。お世話になりました。」
暗めにそういった。
病気を患っている人の気持ち、分かった気がする。
「萌花っ」
病室の前で待っていたのは凪くんと凪くんママ。
「萌花ちゃんっ。大丈夫なのっ?本当に帰れるの?」
「ご心配お掛けしてすみません。大丈夫です。」
私達は車に乗って帰った。
私の居場所に。
「もう寝ますね。」
私はもう死ぬんだ。
あの時、凪くんに止められたけど。
どうせ死ぬんだ。
人間は。
そう思って眠りについた。
凪くんの余命は残り1日となった。
私は部屋を出た。
ダイニングテーブルに一通の手紙があった。
『萌花へ 俺は多分明日死ぬよ。なんでだろ。せっかく萌花に会えたと思ったのにな。まだ言いたいことあんのに未練のままかよ。どうせ何言いたいか鈍感な萌花には分かんねぇよ。楽しかった日々をありがとな。俺は死ぬけど、できれば、俺がいたことを忘れないでいてくれ。不器用な俺が書いた手紙だぞ?宝物にしろよな。萌花に会えてよかった。俺は世界一の幸せ者だよ。』
そう書いてあった。
一人泣いている私。
私も感謝を伝えないと。
好きだってことも。
家の中には凪くんの姿はない。
私は急いで家を出た。
運動は苦手だけど、本気で走った。
でも凪くんの姿は見当たらない。
このまま会えないでいなくなるのかな?
私は会いたいよ。
凪くんっ。
ねぇ、お願い。
話そう。
すると、公園の噴水に座る人が見えた。
「凪くんっ」
涙が溢れた。
「萌花っ。なんでっ」
「最後に話したかったのっ。話聞いて」
「おう」
「とにかくありがとうっ。私のこと助けてくれて。生きる意味教えてくれて。抱きしめてくれて。私のことまた助けてくれて。笑わせてくれて。居場所をくれて、私と出会ってくれて、ありがとうっ」
「な、なんだよ。急に」
「私だって感謝を伝えたいよ。こんなに不器用な凪くんが手紙書いてるんだもんっ。」
「もう見たのかよ」
「見たよ。あの手紙もありがとうっ。私、凪くんのこと好きだから。恋ってものを教えてくれてありがとうっ。じゃあ。」
言えることは全部言い切った。
「まだ俺に未練あんだけど?」
帰ろうとしたけど凪くんの声に止められる。
「俺は小学生んときに萌花に出会った。萌花は忘れてるだろーけど俺にとっては命の恩人だった。親父が死んだってなったときに絶望してた俺に声をかけてくれたのは萌花だった。死にそうな顔してるって俺を抱きしめてくれてんだよ。俺はそれで救われた。やっぱり生きたいって思った。萌花が惚れるような男になりたいって目標まで持った。ずっと好きだった。萌花のことが好きなんだよ」
これが未練?
私のこと好き?
「返事とかそういうんじゃなくて、ただ言いたかっただけだから。萌花が俺の事好きだって知ったし、死んでもいいかなって」
「死んじゃだめっ。本当は死にたくないんでしょ?分かるよ、私も同じ人間で病人なんだからっ。最後まで病気と闘うのっ。私が好きになった男なんだから頑張ってよね。こんな前向きになれたのも凪くんのおかげだから。本当にありがとうっ」
「俺だって…」
「私だって」
「「本当は生きたいんだよっ」」
正反対の私達。
だけど、これだけは一緒なんだ。
どんな人間だって。
辛くても、苦しくても、悲しくても。
みんな生きたいんだ。
本当は。
心のどこかで。
心の隅で思ってる。
多分、あのときの私も、思ってた。
本当は生きたいんだ、って。
がんになったけど、もっと生きたかった。
大好きな君の隣で。
「俺は、こんな世界の中で萌花に会った。ずっと運命だって思ってた。そんな言葉信じらんないかもしれないけど、俺はずっと思ってるから。あっちの世界でもずっと待ってるから」
「ありがとうっ。ふたりで生きたかったね。絶対行くから。」
余命宣告されてから凪くんはちょうど、明日の0時0分に旅立った。
私は、余命半年だったけど奇跡的にがん細胞が小さくなり、平均寿命まで生きられるとのこと。
これも君がくれた奇跡。
本当に、ありがとう。
私が80になっても待っててくれるの?
早く君のところに行きたいけど、
私は生きるよ。
辛くても、苦しくても、どうしても死にたくても。
生きる意味、ちゃんと見つけたから。
ーーー君のために生きるんだ。
ちゃんと待ってて。
頑張って君のために生きて、良いことして、必ず行くから。
あの世へたどり着けるように。
君がいた世界は輝いていた。
今日よりも明日、明日よりも明後日は
輝いている。
君の笑顔はもっと輝いていた。
1年先よりも、10年先よりもずっと。
私に生きる希望を与えてくれた君は、
最高だった。
君のお葬式はみんな泣いていた。
私は泣けなかった。
だって私に
泣くな って言ったでしょ?
だから私は泣かない。
あの世で君にあったとき、
そのときは泣くけど許してね。
私の居場所は君の隣だけから。