諦 念
三人が出ると専務は
「柳川先生、お父様にお力添えを
言って見てください。
お父様が望まれましたら
費用は、大林が持ちます。」
と、言うと柳川先生は、
「畏まりました。」
と、言って会議室を後にした。
「さて、今回の事実確認は
これで終わりました。
一瀬さんも田中さんも
ご自分達のお子さんが
起こした事は、理解していただいた
と、思います。
私は、親御さんに責任をとって
貰いたいとは思っていません。
本人達が仕出かした事です。
本人達がきちんと向き合うことが
当たり前だと思っています。
ですが、一人のお嬢さんに
行った行為を親御さんも
知らないといけないと思いました。」
と、言うと
田中は、なんの事?と
自分の親はいないのに
と、キョロキョロしている。
「あなたのお父さんとは
電話が繋がっているのです。
お父さんには、最初から全て、
聞いて頂いていました。
お父さんに真実だけを
知っていて欲しかったので。」
と、専務が電話を見せた。
画面には、通話中の表示が·····
スピーカーから
「真澄、お前、なんて事を」
と、言う父親の声が聞こえた。
「えっ、お父さん、ちっ違う
違うって。」
と、叫ぶ田中を無視して専務は
「一瀬、
君は自分の進退は、自分で決めなさい。
残るのか、辞めるか
残る気持ちがあるなら覚悟をしてから
連絡をしなさい。
辞める場合は、退職金は支払う。
三瀬さんの支払いもあるだろうから。
だが、転勤にかかった費用は
会社側から請求させて貰う。
そして、
神戸の部屋は直ぐに立ち退いて貰う。
神戸支店へも直ぐに補充人員をしないと
いけないから。
優秀だと思っていただけに
残念だよ。
誠意ある対応さえ出来ていたら
こんな事にはなっていなかっただろうに
三瀬さん側からは弁護士が
介入しての処理になるだろうから
速やかに対応をすること。
月曜日の朝イチで身体の連絡を
営業部長にしなさい。
それでは、お引き取りを。」
と、二人に言うと
「一瀬さん、田中さん
お休みの所、ありがとうございました。
各々のお子さんの事は
よろしくお願いいたします。」
と、言うと
田中の父親は、田中に
「直ぐに電話をよこしなさい。」
と、言い、専務にお詫びを言って切った。
光輝の父は、専務に頭を下げてから
会議室を後にした。
光輝は、父親の後を追うが
「夜に連絡する。」
と、だけ言った。
光輝は、父親の後ろ姿を見送るしか
なかった。
田中は、
「直ぐに実家に帰って来なさい。」
と、父親に怒鳴りつけられて
着の身着のまま、長野に向う。
光輝は、会社の近くの公園に
座り·····
どうして·····どうして····
と、頭の中は······
ただ、それだけだった。