きっと100年先も残る恋
ホームに電車が入ってきた。
心なしか雄介の握力がギュッと強まった気がした。

数少ない人が降りて、私たちが乗る。

同じくイルミネーションを観に行きそうな男女が多い。

「クリスマスだもんね」

同じことを考えてたのか、雄介もそう言う。

少し席も空いていたけど、私も雄介も座ろうとしない。
立って窓の外を眺めている。

「なんか、どっか旅行とか行きたくない?」

不意に雄介が言ってきた。

「泊まり?」
「泊まりでも日帰りでも」
「いいね」

目が合うと、穏やかに雄介が笑う。

泊まりだったらそういうことかな。
そういうことなんだろうな。

あまりにも自然に「旅行」というフレーズが出てきたから「いいね」と言ってしまったけど、いいのかな、私。

「どっか行きたいところある?」

雄介は全然気に留める様子もなく会話を続ける。

「んー、サファリパークとか」
「サファリパーク!富士?」

雄介が笑う。

「サファリパークかー」とニヤニヤしながら吊り革あたりを見ている。

「行くとしたら高速バスかなあ」
「ちゃんと考えてくれたの?」
「だって行きたいんでしょ?」

優しい人。
たぶんもっと優しい人は世界中にゴロゴロしてると思うけど、今は、この目の前の、私が言った一言を尊重してくれる彼が一番だと思う。

「富士山も見たいな」
「富士山なんて天気良ければ見えるじゃん」

そう言う雄介をチラッと睨むと、すぐに「富士山ね」と肯定し直してくれた。

ほら、優しい。
優しいし、すごく私に甘い。

そんな会話をしているうちに、目的の駅に到着した。

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