きっと100年先も残る恋
2月の山中湖。

富士山の頂上と太陽が重なるダイヤモンド富士。
夕方が近付いて、点々とカメラを構えた人々が集まってきた。

私は雄介と二人並ぶ。

「さっむいな」

そう言ってキュッと私の手を握りしめる。
雄介の顔を覗く。
雄介も私を見る。
笑い合えると、幸せだと思う。

富士山と、その富士山を映し出す湖と、そこに差し掛かる太陽。
贅沢な景色だ。

太陽がゆっくりと下降する。
その場にいる全員が、その時を待つ。

「そろそろかな」と雄介が時計を気にする。

まだか、まだかと付きそうでなかなか触れない太陽と富士山。

もう少し、もう少し。

「もう来るよ」

私が雄介に肘で合図する。

太陽が少しずつ、でも確かに下っていくのを見て、私たちは言葉数が少なくなる。

そして静かに、太陽が富士山のてっぺんに触れた。

< 36 / 75 >

この作品をシェア

pagetop