きっと100年先も残る恋
カラカラ
2週間後の夕方。
雄介はカラッとした表情で久しぶりに部屋に現れた。

「おかえり」
「ただいま」

私たちは玄関でいつものハグをする。
そのまま雄介が口を開く。

「父ちゃん、幸せの頂点で、他に被害者もいなくて、良かったかもしれない」

耳元で小さく、落ち着いた声で言う。
それはきっと、たぶんずっと、この2週間何度もそう自分に言い聞かせたんだ。

ふわっと体が離れた。

「ねえ」と言って肩に置かれた手。
ジッと私の目を見つめる。

「英子に話さないといけないことがある」

「うん、なに?」と答えると、雄介はゆっくりと部屋に進む。

雄介の腰の下ろしたすぐ隣に、私も座った。

並ぶ二人の伸びた影。

電気付ければ良かった。
カーテン閉めれば良かった。
夕日が眩しい、西向きの部屋。

「英子、ごめん」

低い声が静かな部屋に響く。
雄介の深呼吸が聞こえる。

何の音もしないことが、かえってプレッシャーになってるのかもしれない。
何か音楽でも流していれば良かった。

「いいや」と、予定を打ち消すように雄介が呟いた。

ゆっくり顔を見合わせる。
お互いの二つの目を、見合う。

雄介がゆっくり唇を重ねてきた。

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