きっと100年先も残る恋
さっきの「ごめん」ってなんだろう。
そう思ったけど、今だけは都合のいい女になった。

止まらないキスを繰り返す。

「話さないといけないこと」って何だろう。

床の上に横たわった時、近づいてくる雄介の体を私の手が静かに抑えていた。
私の頬に水滴が落ちてきたからだった。

響く嗚咽。

雄介が泣いていた。
ボロボロに、ぐしゃぐしゃになって泣いていた。

「言ってよ」

私はそう言って上体を起こす。

雄介が深呼吸をして、口を開いた。

「俺、俳優の仕事やることにした」

まさか、というか、予想外の一言。
そしてそれで何故こんなに泣いてるんだろう。

「ちょっと意味分かんないんだけど」

やっとボロボロの表情が私の方を見上げる。
酷い顔。

「だから、ごめん」 

雄介がまた項垂れる。

「全部説明してよ」

自分でも驚くくらいカサカサにドライな声が出た。

「俺、父ちゃんのドラマに出たかった」

情けない嗚咽交じりの声。

「叶えられなくなってから、気付いちゃった。ごめん」

かっこ悪いにも程がある。
泣き崩れる雄介を私の心が完全に拒む。

< 68 / 75 >

この作品をシェア

pagetop