きっと100年先も残る恋
呼吸する街
初デートは、小雨が降った後だった。
地面が湿っていて、雨は止んだけど重い雲が空を埋め尽くしている。
暗い昼。

待ち合わせは駅の改札前。

待つほどでもなく、フラリと、多分いつもこんな感じなんだろうなと思うテンションで現れた。
モデルなのに、そんなに隠そうともしてない。

「すぐ近くの友達ん家で昨日宅飲みして、そこからまっすぐ来た」

そう言う口元は、少しヒゲが生えていた。

「そのヒゲは生やしてるんですか」

そう聞くと、笑いながら顎を触る。

「撮影ないから剃ってないだけ」

続けて「え、だめ?」と聞いてきた。

「いや、自由だと思うし」

首振ってそう答えると、少し私の目を覗き込む。

「かっこいいかなと思ったんだけど、不評っぽいね」

高松雄介が笑う。
ヒゲが生えてなくても、生えてても、変わらずかっこよかった。

私に特別ヒゲへの思い入れがなかったくらいで。

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