きっと100年先も残る恋
大学4年の最後の冬休み、カフェでバイトを始めた。

初めての出勤の日。

「お疲れ様です」と入り口の方から若い声がした。

ゆっくり見ると、3年前の富士山を思い出してしまう格好の青年がそこに立っていた。
だって、私も偶然、お揃いのマウンテンパーカーを持っていたから。

つい笑ってしまう。

「あ、初めまして」

彼はおどおどと私を発見する。
面接の時はいなかった人だ。

「アルバイトの浜田海です、大学1年で春から2年です」

「よろしくお願いします」とペコッと頭を下げる。
かわいい。

「お願いします」と私も頭を下げた。

全然似てないのに、思わず出会った時の彼を思い出す。
すごく大人に見えてたけど、こんなに幼かったのかな。
子犬みたいだ。

私たちはこんなに幼かったんだろうか。

夢中で繋ごうとした手探りのあの日々。
商店街でさつま揚げを食べたりした。
次会える日が待ち遠しかった。

目の前の青年にあの頃の自分たちを重ねると、かわいくて、守りたくて、幼い。
当時私たちは必死だったんだと思う。
全てが初めてで、小さな力でたくさんの波を乗り越えようとした。

多分雄介も、全然大人なんかじゃなかった。

別れてから気付く。
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