きっと100年先も残る恋
彼が「ごめんね」と一度手を離して、スマホを取り出す。

「これなんだけど」と、「呼吸する街」という文字と、実施期間が映し出された画面を見せてきた。

写真展のようだ。

よく分からないけど「いいね」と言った。

今まで写真展なんて行ったことがない。

そもそも地元でやる写真展なんて、地域のおじさん達の自己満写真で溢れてる。

お祭りや植物の写真ばかり。

それよりはきっと、たぶんいいものなんだと思う。

私たちはぶらぶらと街を下るように手を繋いで歩く。

彼は私のことを「矢野ちゃん」と言って、私は彼を「雄介さん」と呼んだ。

「高松か雄介か高松さんとしか呼ばれたことない」

彼が笑う。

「えーじゃあなんて呼べばいいの」
「雄介さんでいいけど」

「っていうか」と話題を変えてきた。

「目の色素薄いよね。ハーフとかなの?」

たまに言われる。
生粋の日本人だ。

ずーっとずーっと遡った過去までは分からないけど。

「全然。でもたまに言われる」

目が合う。
お互いの目を見つめ合いながら、なんてことない顔をし続けてみせたけど、先に高松雄介の方が笑って負けた。

「こういうの無理」

おでこに手を当てながら、視線を逸らされた。

何が無理なんだろう。

私はその笑う横顔からしばらく目を離せずにいた。

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