夜が明けていく。
翌朝、いつもとは違う感覚で目が覚めた。

毎夜“このまま朝が来なければ良いのに”と願い、毎朝“ああ、また1日が始まってしまった”と落胆していた。

それなのに、今朝はとても気分が良い。

清々しい気持ちでリビングに向かうと、久しぶりに会う伯父の姿があった。

「やあ華!久しぶりだね。元気そうで安心したよ!」

「伯父さんこそ元気そうね。今日はどうしたの?」

「うん。華にちょっと話があるんだ。こっちに来て座ってくれるかい?」

「うん・・・・・・」

促されるまま座り伯父に視線を向けると、何やら深刻そうな表情をしていた。

「昨夜のこと聞いたよ・・・・・・“あの事”があってから、君はずっと我慢してきて辛かったよね。でもね、両親に心配掛けちゃいけないよ。華がどこに行ったのか分からなくて、辰臣なんて電話で取り乱して大変だったんだよ」

「兄さんそれは黙っててくれよ〜」

「あら、本当のことなんだから良いじゃない」

「・・・・・・お父さん、お母さん、昨日は心配掛けてごめんなさい」

「よし!じゃあ、僕のお説教タイムは終わり。ここからが本題なんだけど・・・・・・華、暫くうちに来ないかい?」

「えっ!?伯父さんの家に!?」

私は伯父の言葉の真意が理解できず、思わず大きな声で聞き返してしまった。

「ごめんごめん、そりゃあ驚くよね。実は、少し前から自宅でシェアハウスというか下宿のようなことをしててね、格安で部屋を貸してるんだよ。一部屋空いているから、そこに住んで管理業を手伝ってくれないかな?僕一人だと本業との両立が大変でさ。特に締め切り前なんて余裕なくてさ。お願いできないかな?」

管理業を手伝うというのは、きっと建前だ。

本当は私の今後を心配して、世の中(そと)と他人と関わらせようとしているのだろう。

私の時計の針は、あの日からずっと止まったまま。

それなのに、ここ最近は色んなことがあった。

気持ちが高揚する感覚を久しぶりに味わった。

もしかしたら、また動き出せるかもしれない。

私は不安と期待を胸に「はい」と頷いた。
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