夜が明けていく。
出逢い編
私は今日も自室にこもっていた。

“あの事”があってから、どれほどの日々をこの部屋で過ごしただろうか?

以前は四六時中小説のことばかり考えていて、1日が24時間なんて私には全く足りなかった。

それが、今では1日が早く終わるように願う日々へと変わってしまった。

「こんなはずじゃ・・・・・・」

そう何度何度も心の中で呟いた。

定位置になったベッドの真ん中に座り、適当にチョイスした音楽を流す。

曲なんて何でも良い、静寂でなければそれで良かった。

“あの事”を思い出し、フラッシュバックさえしなければそれで・・・・・・。

何も考えずボーッとしていると、コンコンと部屋をノックする音が響いた。

「・・・・・・はい」

私は少し遅れ気味に返事をすると、遠慮気味にドアが開いて父がひょいっと顔を出した。

「はーなちゃん!夕飯できたから、こっちにおいで」

「わかった・・・・・・。今行く」

やっと今日が終わる安心感で、私はホッとしてダイニングの席に着いた。

両親は引きこもる私を心配して、最近は仕事をセーブしてくれている。

そのおかげで3人揃う事が珍しかった食卓が、ほぼ毎日家族揃って食事ができるようになった。

“あの事”は、私にとって悪いことばかりではなかったのだろうか。

ただ、あれ以来両親は私に対して遠慮していた。

自分たちの仕事が原因で、私が小説を書くことができなくなってしまったから・・・・・・。

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