夜が明けていく。
私の両親は2人とも芸能人をしている。

父の赤木辰臣(あかぎたつおみ)は、イケオジ俳優として子供からお年寄りまで、幅広い女性を虜にしているそうだ。

ただ、それはテレビの中での話。

本当の父は、家族の前ではデレデレの頼りないおじさん。

そして、そんな父を尻に敷く母の赤木麗華(あかぎれいか)は、美魔女モデルとして世の女性に憧れられる存在。

サバサバした性格も相まって、男女問わず人気。

そんな両親の元に生まれた私は、意外にも普通だった。

父や母のような華やかさもなければ、特別可愛くも美しくもない。

どこにでもいるような普通の子。

そのため、両親の事務所の人たちからは「2人の名前に傷が付くような行動は控えるように」と言われ続けてきた。

結局は、その忠告は正しかった。

私がその忠告を無視して勝手に文学賞に応募してしまったせいで、両親にも迷惑をかけることになってしまったのだから、、、。

私が黙々と食事していると、父がニコニコしながら話しかけてきた。

(はな)ちゃん、今日はどんなことをして過ごしたの?」

「、、、普通。いつも通り何もしてないよ」

「そっ、そっか。ハハハ、、、そうだよね」

父はそれ以上何も言えなくなってしまい、見兼ねた母が父を一睨みして口を開いた。

「今夜も散歩に行くの?」

「、、、うん。少しだけ行ってくる」

「そう。あまり遅くならないようにね」

「、、、わかった」

夜の散歩は私の日課だった。

あの日以来、どこにいても息が詰まるような思いだった。

だから私は、少しでも深く息ができる場所を求め、顔のささない暗い夜になってから外出するようにしているのだ。
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