ひと雫ふた葉 ーprimroseー
道中、以外にもコイツがいろいろ背負てるんを知って妙に胸がざわついた。
与雅澄神社の跡取り娘、つまり次期巫女導師になるための見習いとして日々過ごしていたが、宗巫という職種にも関わらず、コイツには霊感の〝れ〟の文字もあらへんかったらしい。
そればかりか妹の方が全てにおいて優秀らしく、酷く落ち込むこともあったそうだ。
そんな時、幼馴染の柴樹に霊感は生まれ持ったものばかりではなく、修行を積めば多少は身につけられるものだと聞いたコイツは、自分にできることをしようと動き出した。
母親から巫女導師を継ぐために。巫女導師は神憑においてなくてはならない存在。コイツが懸命になるんも頷ける話や。長女として役目を果たそうと、な。
「それなのに、パパってば……いつも〝お役目お役目〟ってうるさいし。今日に限ってはアンタと出かけることを伝えたら『男と遊んでる暇があれば自分にやるべきことをしなさい』……って」
ようやく見つけた東屋に腰を下ろしながら、心なしか悲しそうな顔をした瑮花が言った。
自分は努力してるのに、それを踏みにじるような言い方されたから、コイツはあんなにキレはったんや。
「……オレも」
コイツもここまで話してくれたんや。オレにも似たようなことがあったと言えば……そないな思いしてたんが自分だけやないってわかったら、コイツももっかい前向いてくれはるやろか。
「オレも、ほんまは浄霊師やのうて、兄貴と同じ……除霊師になりたかってん」
ひとつずつ、今までの出来事を瑮花に話していく。