ひと雫ふた葉 ーprimroseー
完全に戻って来た時には体は重力に負け、受け身を取ることもできずにそのまま倒れてしまった。
「柴樹!!」
飛び出した瑮花に抱かれ、頭を打つことこそなかったものの、今回の神憑による疲労感は尋常ではない。視力が悪い方わけではないのに目の前はかすみ、呼吸も浅くなる。
皆が慌ただしく動いている中で、ふと父さんの声が耳についた。
「やはり、無理をさせ過ぎたか……」
そんなことない。俺はまだやれる。動ける。こんなとこでくたばってちゃ、せっかく朱紗が教えてくれたことも水の泡だ。
精一杯の力で地面を押し、瑮花の膝の上から頭を持ち上げる。
「あっ……柴樹! 無理しちゃ……」
「大丈夫……無理なんかしてないよ。俺には朱紗がついてるんだから」
その瞬間から自然と呼吸も整い、視界も鮮明になっていく。
────朱紗のやつ、喜んでる。
体も軽くなって、すっと立ち上がると皆驚いた顔をした。
「柴樹、神憑の反動は……」
「平気。それより、解決法がわかったんだ。皆、力を貸して欲しい」
振り返って爺、父さん、母さん、沙与さん、瑮花、徳兄を順番に見た。
きっと救える。雨香麗は殺さずに済む……──。