ひと雫ふた葉 ーprimroseー
9ly.咲き出でる双葉
1es.追憶の青時雨
「雨香麗ー!」
いつもの教室。いつもの風景。いつもの……親友。
「由海。今日、部活は?」
「ないよ! だからさ、この前言ってたお店行こう」
「タピオカとかクレープが美味しいとこ?」
「そ!」
互いに笑い合い、毎日が輝いていた。
学園から少し離れた人の多く行き交う大通り。隣で幸せそうにクレープを頬張る由海のそばで、わたしは手にした鮮やかなグラデーションを見つめる。
他愛ない会話をした帰り道。どうでもいいことで笑って、ささやかな恋の話もした。
「あのね、雨香麗に聞いてほしいことがあって」
「どうしたの、かしこまって」
「……わたし、麗司さんが好き」
突然告げらた恋の相手。
「え!? ほんと!?」
「うん。雨香麗には、ちゃんと言っておきたくて……」
「うわー! 応援する!! お兄ちゃんのことならなんでも聞いて!」
まさか由海までお兄ちゃんのことが好きだなんて、本当に驚いた。けれどそこに負の感情なんて微塵もなくて……──。
お兄ちゃんがどれだけモテていても、その彼女にふさわしいのは由海だと、そう強く思っていた。
それほどに由海はわたしにとって家族に近い存在で、大好きだった……のに。
「あ、由海。今日一緒に帰……」
「ご、ごめんね。急に用事入っちゃって」
由海に部活がない日、必ず一緒に帰ってた。
それも次第に拒まれるようになって、あっという間に数ヶ月が経ってしまう。その頃には由海から話かけてくれることもなくなって、毎日思い悩んだ。
わたし、何か由海を怒らせることしちゃったかな。もしわたしのせいで起こっているなら謝らなきゃ。
そうだ、由海の誕生日にお兄ちゃんにプレゼント選んでもらって、それを渡そう。お兄ちゃんからだよって言ったら、喜んでくれる……よね。