ひと雫ふた葉 ーprimroseー
「元親友なんてやめてよ、気色悪い」
下品な笑い声の中、聞き慣れた声が耳を刺す。
「わたしがあいつと友達ごっこしてあげてたのは、麗司さんが欲しかったから」
「アンタほんと曲がってんね」
「いやぁ、それについて来るあんたらも同じようなもんよ」
吐き出すように言う由海の声をそれ以上、聞きたくなんてなかった。耳を塞ぐけど、それとは裏腹に体は耳を澄ましてしまう。
「それにしてもあいつに〝協力〟させりゃ、麗司さんも手に入ると思ったんだけどなー」
「その話は何回も聞いたって。『お兄ちゃんお兄ちゃん』って兄貴自慢するだけして、役立たずだったんでしょ」
「そー! ほんときめぇよ」
その後も次々と突きつけられる現実。
由海のいじめも見せかけだけのもので、しつこいわたしを遠ざけ、しかもいじめの対象が由海からわたしに移ったように見せるためだったらしい。
全て計算済みだった。わたしとの友達ごっこも、いじめも。
この瞬間から、わたしは生きる意味をなくした。
理事長を務めるパパに学園でのいじめの話なんてできるわけもなく、心配性のお兄ちゃんはこのことを知れば何をするかわからない。
すごい怒って、由海達を殺しに行っちゃうかも。パパだってわたしが余計なことをすれば仕事をなくしちゃうかもしれない。
いろんな心配が巡って、わたしは決意する。
────死のう。