ひと雫ふた葉 ーprimroseー
いろんな死に方を調べて、睡眠薬を大量に服用すれば死ねることを知った。でも一気にたくさん売ってくれるところなんてないから、少しずつ集めた。
その間もいじめには耐え続けた。
もう少し。もう少しで楽になれるからって自分を励まして。
どうしても耐えられなくなったら腕や足を切った。切れるだけ、気が済むまで切って、睡眠薬で眠る。
そんな日が続いて、やっと致死量の睡眠薬がそろって、自殺を実行した。やっと楽になれると思ったら帰り道も笑みが零れ落ちて、変な幸福感がわたしを包み込んだ。
最後だから、この身体ともお別れだから、生きている痛みを感じたくていっぱい切った。切って切って、切りまくって、白いベッドを血に染め上げる。
痛みを感じたかったのに、なんでかあんまり痛くなかった。まぁいいか。
お腹がいっぱいになるまで薬を飲んで、また刃を立てる。だんだん頭がふわふわしてきて、ぜーんぶどうでもよくなって。
ああ、しあわせ。あかい血はわたしのいきた証。わたしはここにいた。
確かにここにいたんだとそんな思いを噛み締めながら、意識が遠のいていくのを感じる。その時、部屋のドアが乱暴に開け放たれた。
「あ……そっ……か」
血だらけで薬の海に横たわるわたしの体を抱きしめ、泣き叫ぶお兄ちゃん。
それを部屋の片隅で眺め、ぼんやりと思考する。そっか。これはわたしの記憶。今までのわたし。
「ごめん、お兄ちゃん……」
自分が血で汚れるのも気にせず、電話を片手に涙を我慢して話すお兄ちゃんを見て胸が痛くなる。
わたし、なんてことしたんだろう。
次第に我に返り、後悔の念に苛まれる。でも……。