ひと雫ふた葉 ーprimroseー
『〝絶望〟だよ』
と言い放った。その一言に今までの全てが押し寄せてわたしを惑わせる。
もし、また裏切られたら?
パパだって、面倒な娘だと思ったから見舞いにきてくれない。お兄ちゃんも外面を守るため、わたしの世話をしてる。
柴樹もどうせ……わたしがめんどうな奴だと知れば、本当のわたしを知れば、離れていく。
なぜだか本人達にそう言い切られてしまったような感覚に陥り、全身から力が抜けていった。
『目を覚ませばきっと責め立てられる。〝お前なんて目覚めなければよかったのに。そのまま死ねばよかったのに〟って』
……そうだ。わたしは生きている間、迷惑しかかけてない。いまさら目を覚ましたって、きっとお荷物が増えるだけだと言われる。
そうなるくらいだったら、やっぱり……──。
『もう、楽になろう?』
音もなく近づいたそいつは俯いていたわたしの頬を両手で包み、視線を合わせる。その顔は次第にわたしそっくりに変わっていき、穏やかに微笑んだ。
『あなたの味方は1人だけ。……わかる?』
「わたしの……味方は、あなた……」
『そう。おいで、わたしとなら傷つかないよ』
広げられた彼女の腕の中に体を預ける。
そう……わたしには、わたしだけ。
温かな体温に呑み込まれゆく中、わたしは目を閉じる。
────もう、なにもいらない。