花音(かのん)
「大丈夫?寝てなよ。」
幸一が詩穂を覗き込むように見た。
「体が重い。」
詩穂は起き上がるのをやめて、再びベッドに横になった。
幸一はついたてを少しずらして、詩穂の顔を見えるようにし、
ベッドの脇にあった、丸イスに座った。
「山下君は?」
「オレも頭ガンガンする。」
「山下君の場合は、熱もないし、昨日の夜、音楽聴きながら寝たんじゃない?」
保健室の先生が、奥の部屋に入ってきた。
「あー。先生すげぇ。オレ昨日、音楽聴きながら眠った。」
「それが、頭痛の原因です。はい、教室に帰った帰った。」
しっしっ、と幸一を追い出す仕草を保健室の先生がみせた。
「頭が痛いもん。少し休ませて。」
「丸イスに座ってるやんけ。元気な証拠じゃ。教室で勉強してこい。」
「ちえっ。」
幸一は丸イスを元の位置にもどすと
「早く元気になってね。」
と、詩穂に言い、保健室を後にした。
詩穂は、嬉しそうに笑い、幸一を見送った。
少し、体が軽くなった気がする。
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