花音(かのん)
4
「はい、先生。」
「おう、ありがとう。」
担任の金本が、職員室の前で詩穂からファイルを受け取った。
今日からテスト1週間前で、部活も中止になり、みんな勉強モードになろうという事になっている。
先生達もテストを本格的に作り始めるので、職員室は生徒立ち入り禁止となる。
そこで、金本と、詩穂は、職員室前で話をしていたのだ。
金本は詩穂から手渡されたファイルをめくりながら見ながら言った。
厚めの紙に、1枚1枚絵が描かれている。
「佐々木は、進学するつもりは無いのか?」
「無いね。全然ない。」
「そうか、せっかくこれだけ絵が描けるのにな。」
「絵は趣味。」
「佐々木らしいな・・・まあ、そんな事より目の前のテストだな。テスト週間中に悪かったな。」
「いいって事よ先生。テストの問題1問でも教えてくれたら、チャラで。」
詩穂は何かを貰う時のように、手のひらを先生に出した。
金本は、パシッと軽く詩穂の手ひらをたたいて言った。
「さっさと帰って勉強しろ。」
詩穂は、あははと笑って、手をふりながら「カネちゃんサヨーナラー」と職員室の前を後にした。
テスト前とはいえ、商業高校。
勉強にしても、ピリピリと張りつめたものはない。
1階3年、2階2年、3階1年と階が分かれていて、
就職に関わる内申点や、一部の受験生がいる3年生の階の電気はほとんど消えているが、
2階3階割と生徒が残っていて、勉強ではない話し声が聞こえている。
3年生の教室は1階にあるので、一番日があたらない。
全部の教室の電気が消えていると、薄暗く見える。
1カ所だけ、電気のついているクラスがあった。
3年3組。
詩穂のクラスだった。
誰か私の荷物に気づいて電気は消さずにおいてくれたのだろうと、詩穂は教室へ入った。
「あれ?佐々木さん、まだいたんだ。」
教室には、幸一がいた。
「山下君こそ、何やってんの?」
詩穂と、幸一は、1年生の時、同じクラスだった。
お互い人見知りするタイプではないし、嫌いな要素もないので、全然話しをしないという間柄ではなかった。
かといって、仲が良いというほど、話をした事もなかった。
2年になってクラスが違っても、廊下ですれ違ったりすると、挨拶程度はしていた。
「おう、ありがとう。」
担任の金本が、職員室の前で詩穂からファイルを受け取った。
今日からテスト1週間前で、部活も中止になり、みんな勉強モードになろうという事になっている。
先生達もテストを本格的に作り始めるので、職員室は生徒立ち入り禁止となる。
そこで、金本と、詩穂は、職員室前で話をしていたのだ。
金本は詩穂から手渡されたファイルをめくりながら見ながら言った。
厚めの紙に、1枚1枚絵が描かれている。
「佐々木は、進学するつもりは無いのか?」
「無いね。全然ない。」
「そうか、せっかくこれだけ絵が描けるのにな。」
「絵は趣味。」
「佐々木らしいな・・・まあ、そんな事より目の前のテストだな。テスト週間中に悪かったな。」
「いいって事よ先生。テストの問題1問でも教えてくれたら、チャラで。」
詩穂は何かを貰う時のように、手のひらを先生に出した。
金本は、パシッと軽く詩穂の手ひらをたたいて言った。
「さっさと帰って勉強しろ。」
詩穂は、あははと笑って、手をふりながら「カネちゃんサヨーナラー」と職員室の前を後にした。
テスト前とはいえ、商業高校。
勉強にしても、ピリピリと張りつめたものはない。
1階3年、2階2年、3階1年と階が分かれていて、
就職に関わる内申点や、一部の受験生がいる3年生の階の電気はほとんど消えているが、
2階3階割と生徒が残っていて、勉強ではない話し声が聞こえている。
3年生の教室は1階にあるので、一番日があたらない。
全部の教室の電気が消えていると、薄暗く見える。
1カ所だけ、電気のついているクラスがあった。
3年3組。
詩穂のクラスだった。
誰か私の荷物に気づいて電気は消さずにおいてくれたのだろうと、詩穂は教室へ入った。
「あれ?佐々木さん、まだいたんだ。」
教室には、幸一がいた。
「山下君こそ、何やってんの?」
詩穂と、幸一は、1年生の時、同じクラスだった。
お互い人見知りするタイプではないし、嫌いな要素もないので、全然話しをしないという間柄ではなかった。
かといって、仲が良いというほど、話をした事もなかった。
2年になってクラスが違っても、廊下ですれ違ったりすると、挨拶程度はしていた。